松阪牛が全国区になった原点

松阪牛というと日本を代表する和牛、ブランド牛です。
日本人なら誰でも一度は、松阪牛という言葉を聞いた事があるでしょうし、世界に誇れる素晴らしいお肉です。
でもこのお肉を松阪牛というブランド牛として現代まで支えてきた背景には係わってきた全ての方々のご苦労あってこそと気がつきます。

松阪という地域は伊勢平野中央に位置する農耕が非常に盛んな地域。
今は機械化が進み、昔よりもずっと作業も楽になりましたが、機械化される以前は農機具を引く牛がなくてはならないものだったのです。
役牛としてその力を発揮してきたのが兵庫県但馬で生まれ育った牛でした。
この牛が優れた素質を持っていたのには、この但馬地方だったからなんですね。

この地域は現代の豊岡市、美方郡、などに当たりますが、昼と夜の気温差がかなりあり、夜霧も発生することから質のいい柔らかい草が自生していました。
また岸田川、矢田川などのきれいで美しくおいしい水があり、牛が健康に質よく育つ絶好の地域だったんです。

江戸時代に入り雌の子牛が大阪を経て紀州へ、そして農耕用に調教され力のある働き手として松阪地方に入ってきました。
大人しく人間に従順でよく働くということで、農家では実に大切に扱われてきました。
この農耕用だった質の高い牛が農耕で3年もすると、野上がり牛とされ1年くらい肥育され当時太牛といわれ食肉となったんです。

さらに明治以降には文明開化と共に「牛鍋」が大流行しました。
これは現代のすき焼きの原型とされるもので、関東大震災以降、関西ですき焼きという名前に定着しそれが全国区になったようですね。

松阪牛が全国区になったのは、山路徳三郎と呼ばれる方の「牛追い道中」によってです。
明治5年、まだ交通手段もなかった当時、松阪牛を東京に広めるために牛を集めて「徒歩」で大行進をしたのです。
それが二十数年も行なわれたといいます。

鉄道などの交通手段の発展によってその後この見事な大行進は見られなくなりましたが、ここから松阪牛というブランドが知られ、最高級牛肉として認められていったのです。

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